ブック・レビュー 『主要教理別聖句ノート』
遠藤 嘉信
日本同盟基督教団 和泉福音教会 牧師
御言葉を鳥瞰的に眺めるための一冊
聖書は、物語の形式であったり、詩であったり、格言であったり、手紙であったりと、多様なジャンルで記されています。私たちはそうした聖書を、順を追ってあるがままに読んでいきますが、そこで気づくことは、それぞれの著者が、驚くべき一致と共通認識をもって、神、人、そして世界について記しているということです。あるがままに読むことに加え、そうした共通項に気づき、驚きと共に、それを整理して鳥瞰的に眺めたいという願いは、御言葉への情熱のひとつの現れです。また、この尊い神の御言葉をどうしたらよく理解し、また理解してもらえるか、という「主の証人」(ルカ二四・四八)の熱心であると思います。
本書は、組織神学で伝統的に提示されている教理の順に従って御言葉を整理したというよりも、むしろ宣教的な視座と牧会的配慮をその大きな特徴として、[1]「神の国」、[2]「人間、世」、[3]「キリスト教信仰」といった三つの領域に関わる聖句に分類しています。
[1]は、神や神の国の存在に関わる聖句、神の義と愛を対局に配置しつつ、神のご性質、属性に関する聖句、三位一体の理解を踏まえて、イエスの御業、御霊の御業に関する聖句を集めています。[2]では、人間とその罪性について、また、サタンに支配された罪の世の状態についての聖句を整理しています。そして[3]では、神の一方的な働きかけによって得られる救いと信仰の応答に関する御言葉、キリスト者と教会、その使命に関する御言葉を集録しています。
こうした編者の意図を踏まえて本書を用いるならば、個人の聖書理解の助けとなるばかりか、教会での聖書入門クラス、また、受洗準備クラスや成人クラスの御言葉の学びにも有益であると思います。聖書の教理を学ぶ上で、それを支持する御言葉そのものを味わい、また確認できることは、本書の最大の魅力でしょう。編者の並々ならぬ尽力とその情熱に敬服します。