ブック・レビュー 『互いに語り、ともに主に向かう』
夫婦の霊的友情を育てる10のポイント
友納 徳治
日本バプテスト連盟 伊都キリスト教会 牧師
自分の必要を求めがちだが、父なる神は、私自身を求めている
もしこの本の副題「10のポイント」にひかれて手にした人には、期待はずれとなるかもしれません。ここには、夫婦仲良く、円満に、互いの違いを認め合って、忍耐強く、祈りをもって、問題や障害をどう解決し、どう克服するかの手引き、よく言われるノウハウはないからです。
しかし、読み終えた人は、これまでの自分の結婚生活や信仰、人生への思い違いや習慣的な毎日の繰り返しの中で置き忘れたものに気づかされます。神の備えられた測りしれない贈物に、です。
その意味でも、まず序章と一章、そして最終の十章を読まれての通読をおすすめします。そのわけは、この著者の鍵言葉となる「霊的」「霊性」とは神の贈物──父なる神の愛に生かされて生きるための生き方、暮らし方をさすからです。
私たちは、ともすれば自分の欲しいもの、必要としているものを神に求めがちですが、父なる神は、何よりも、この私自身を求めておられるということには疎いものです。
しかもご自身の余ったものではなく、最も大事な命そのものであるイエス・キリストを与えておられることへの私たちの感謝と喜びは、日々の中であまりにも小さすぎないでしょうか。
最終章の冒頭に「結婚して六年、私たちはお互いの霊的関係を育てる努力を続けてきました。何度も何度も失敗し……(相手の)見かたをよく知ろうともせず、むしろ自分の期待する方法でやってほしいと思っていたのです」(一七四頁)とあります。
私たちも、神の愛にならい、互いの関係の在り方、つまり相手に何かを求める前に、向かい合う人からも求められていることに気づく──これが「霊的」「霊性」の「10のポイント」──著者の願いだからです。
訳者の豊かな経験知に裏打ちされたやさしい文章も、読む者にはうれしいかぎりです。