ブック・レビュー 『信仰の友への手紙』
重田 稔仁
単立 上野の森キリスト教会 牧師
悩みに囚われた信仰者の心のために
本著は、著者ユージン・H・ピーターソンが、この世のキリスト者の抱える信仰生活に関する多種多様な疑問やジレンマを受け、彼の刎頸の友(グンナル)との間で交わした手紙のやりとりを通じて、悩みに囚われた信仰者の心を、生ける神が支配する世界に向けさせるために記した書である。彼はその目的のために、全体を通じてキリスト者の信仰生活における誤った固定観念や幻想、あるいは人為的な操作を狙った教えに対して、厳しい態度と言葉で批判している。(クリスチャンの霊的指導やクリスチャンの成長、霊性の形成に関する誤解などについて)それは一部の既存教会がキリスト者の混乱を増長しているという現実があるからだ。
ピーターソンは一貫して、クリスチャンが霊的であるとは、人が聖霊なる神の働きと導きをその人生に受け入れることだと定義し、クリスチャンの成長は普段の生活の中で日常的な出来事を通じて神の霊によって育まれていると教えている。従って彼は、クリスチャンの自らの魂に対する責任とは、人が神の霊の働きに気づき、それに思いを巡らすことだと指摘している。
その辛らつな批判を目の当たりにした読者の中には、彼にシニカルで傍観者的なアウトサイダーのイメージを重ねるかもしれないが、私はかつて神学校で彼に師事した者の一人として、彼について一言弁護をさせていただきたい。彼は、牧会者中の牧会者である。人と人の関係にその身を置き、傷つき痛み、悲しむことをいとわないキリスト者である。したがって彼は、本著でいたずらに他者を批判して自らの傷を覆い隠し、批判的な精神を持つ人々の共感を安易に期待しているのではない。私たち読者が「聖書的に訓練された精神と、聖霊に明け渡された心」で(67頁)人間の真実な姿を直視することを求めているのである。その理由は、私たちが真実な人間の姿を見つめるとき、そこに神の真実な恵みを発見することができると彼が確信しているからだ。