ブック・レビュー 『信仰の旅路』たましいの故郷への道

『信仰の旅路』たましいの故郷への道
麦野 賦
日本バプテスト連盟 伊集院キリスト教会 牧師

困難の中でどのように成長していくのか 期待する人々に示唆を

 「信仰こそ旅路を導く杖、弱きを強むる力なれや」の歌詞で知られる賛美歌は、多くのクリスチャンの愛唱歌であります。小生も十二歳で入信以来、半世紀に渡る人生の旅路でこの歌に慰められ励まされてきました。

 本書は、「私たちは、好むと好まざるとにかかわらず旅人です。ある人にとっては、その旅は誕生から死まで続き、その先はありません。一方、神を知るに至った人にとっては、旅はさらに複雑なものです」の書き出しで始まり、信仰の旅と最後に神と対面するまでの道筋や、そこで起こる様々な困難や誘惑を克服する手立てを示しています。

 信仰生活を荒野の旅ととらえ、どこを目指し、困難の中でどのようにして成長し続けることができるかを語ります。荒野の旅を四行程に分け、創世記からヨハネ黙示録までの神の人類救済の意思との関わりで迷い悩みつつも成長を期待している人々への示唆が数多く紹介されています。

 「創造と疑い」「捕囚と失敗」「贖いと恐れ」「成就と苦しみ」の四行程を通して天地創造・バビロン捕囚・十字架と復活・再臨と成就に向かう神のみ心への応答が語られます。具体的な証として、十二人からなる信仰の先達者の生き方が紹介され、同じように悩みながら信仰生活を送った先達の言動が大きな慰めと励ましとなっています。

 著者は自然科学者であり神学者であります。現在はオックスフォード大学神学部教授の働きと共に、自らの信仰の理解に不満を覚え、何とかしたいと願っている人のために執筆活動に携わり本書が出版されました。訳者の稲垣久和氏(東京基督教大学教授)は、世界的に幅広い読者層を持つ著者を日本に招請し、日本のキリスト教界に新たな息吹をとの願いを持つ。信仰の成長を願う多くの魂が捉えられ希望の糸口となりますように。若い世代の方々にお勧めできる書と確信します。