ブック・レビュー 『喜びと祝福のあふれる丘 美瑛・富良野』
伽賀 由
日本メノナイトキリスト教会協議会 十勝地区伝道師
神の造った大自然の中で、詩篇に触れる
「なんて素晴らしい写真」最初に本を手に取った印象だ。
その一枚一枚の写真を見ると、このカメラマンがいかに北海道の自然を愛しているか、そして毎日、大自然の変化を地道に丁寧に撮りためていたのだろうと伺える。
これまでに二年ほど、故郷の北海道を離れて上京したことがある。情報の全てが集中している大都会の便利さや、アカデミックな交わりはとても魅力的だったが、澄んだ空気と空が恋しかった。厳冬の空気の凛とした静けさは、潔さを教えてくれた。雪解けの時期には、地熱で土が発酵し蒸気が冷やされて、白い霧が地面を覆う。毎年イースターを待ちつつ、自然の全てを司る全能の父なる神が、十字架によって新しい命を与えたことを想う。
写真には、春の山桜が、夏には新緑やジャガイモの花が、秋はコスモスが美しく彩っている。山の紅葉は、決して京都のような洗練さはないけれども、北海道の自然のありのままの、素朴な力強さを感じさせる。
そして何よりも、写真に添えられた詩篇の聖句が良い。ゆっくりとページをめくりながら、深呼吸ができる。引用された詩篇の聖句を通して、そこから聖霊の風が吹いてくるようだ。
写真集としては、とても小さく軽いのも良いと思った。それでいて、写真全体の迫力が損なわれておらず、ただ見ていても楽しめる。病床の方に、回復を祈りつつ贈るのに最適だろうと思う。横になって本を開いても、それほど負担にならないだろう。また、しばらく信仰を離れている方に、無理をせず、ゆっくり歩んでほしいと祈りつつ贈るのも良いかもしれない。
ページをめくり、深呼吸をし、聖霊の風を体の細胞の隅々にまで行き巡らせながら、詩篇の聖句を黙想すると、目の前に広がる大自然が、これまでとは違った見方で、教えてくれるかもしれない。