ブック・レビュー 『地に平和』
岸 義紘
JTJ宣教神学校 学長
日常をテーマとする心温まるエッセイと感動的なあかし文学
本書の構成は、二部に分かれています。前半はエッセイが二十二編、後半は信仰人生に起こった感動的な出来事を取り上げた作品が三編おさめられています。 前半のエッセイはテーマ別です。「夫婦」四編、「子育て」六編、「姑」二編、「信仰」四編、「生きる」六編です。ほとんどすべてが、以前に「百万人の福音」に掲載されたもので、著者自身の家庭生活や教会生活の中で直面した様々な出来事を取り上げています。そして著者の繊細で、聡明で、明るい気質をもって受けとめ、取り組み、考え、学んだことを、実にさわやかな筆致でまとめています。これらは、私たち誰もが同じように日常生活の中で出会い、避けては通れない事柄ばかりですから、楽しく共感しながらも、教えられ、励まされるにちがいありません。たとえば「『物』から自由に」(六八―七〇頁)には、こんなことが言われています。
「最近のわが家の物の増え方はどうでしょう。……処分できる物は、『思い出』などにこだわらず、どんどん手放そうと決心し、……『物』から清められて、裸でかしこに帰りたいと思います。」
「『汚れている家ほど、家庭集会をしなさい」(本田弘慈師)、『家の中はひっくり返っているのに教会には行っている』(姑の指摘)
後半の三編のあかし文学作品は、「クリスチャン新聞」と「百万人の福音」の文学賞に応募して入選した作品で、選者であった三浦綾子先生が一目おいたという「虹」をはじめ、すべて完成された秀作ぞろいです。
「文は人なり」韓国籍の夫君と生きてきた幸せで、緊張もある人生において培われた優しさと強さ、そしてキリスト信仰の品性とが、優れた文才と相まって、本書を魅力的に輝かせています。
婦人会でも、テキストとして一編ずつ取り上げ、話し合えばよい学びになるでしょう。