ブック・レビュー 『夫たちよ、妻の話を聞こう』
鈴木 茂
保守バプテスト同盟 仙台聖書バプテスト教会 牧師
金、性、プライド……、男を束縛する罪から解放されたくはないか
これは、クリスチャン男性たちの心の旅路の物語である。外側の世界にばかりに関心が奪われ、ふと気付いてみると心の世界に多くの痛みや障害が取り扱われないまま残され、そのまま旅路を続けていることがないだろうか。著者は、「男性だけの集会」に一人の男性として参加し、その中で正直に男性特有の問題(お金のこと、性の誘惑のこと、プライドのこと、支配欲、父親との関係)を見つめている。
お互いに弱さを告白し、それを共有し、祈り合うことから気付かされたことや、痛々しい過去、隠したくなる失敗、今もなお習慣的になっている罪の中から確実に解放され変容していく男性たちの姿を描いている。
男性は、自分の心のことについて見ることも語ることも避け、心に闇や不自由な世界を無意識のうちに築いてしまっていることがある。律法的にこれらの問題に取り組むよう勧めることなく、あくまでも御霊が招き入れてくださる交わりの中で、共通の問題を抱えた男性たちが「ただ語りあい、分かちあい、祈りあうことで解放されていく部分がかなりある」(14、15頁)と著者は一人の兄弟として分かち合っている。
また、霊性の成熟の鍵をキリストの受肉に見出している。「キリストがそうされたように」妻に対して男性は生きるように招かれている。最も近い関係の中に、男性には自分に死ぬ場が備えられている。妻の心に合わせて聞けるようになるために、妻が安心して語れるようになるために、男性は自分に死ぬように招かれている。その死を通して夫婦が互いにひとつの霊の歌をもって生かされるようになる。「男性が(死んで)自由にされることが、ひいては妻を自由にしていくのだ」(96、97頁)という言葉に、死ぬことによって生かされる、という十字架―復活というクリスチャンライフの重要なモチーフを垣間見ることができる。