ブック・レビュー 『夫婦で奏でる霊の歌』
唄野 隆
堺大原キリスト教会 会員
KGK(キリスト者学生会)協力主事
夫婦の愛を深め、神との交わりを成熟させる
KGK(キリスト者学生会)の主事のころからずっと親しくしていただいている上沼昌雄先生が、『夫婦で奏でる霊の歌』という何とも魅力的な題名の美しい本を出版された。この本は、先生が進めてこられた男性集会とその延長上の夫婦セミナーの経験を、雅歌の瞑想と結び合わせて語っている。夫婦の愛の深化を、それと分かちがたく重なるキリストと教会との愛の交わりの成長へと導いてくれる。
雅歌の中で主人公の男女が花にたとえてお互いの愛を言い交わしているところを用い、夫婦セミナーでお互いの気持ちを花にたとえて表現したときのやりとりなど、雅歌の深奥な世界と私たちの現実とが見事に結びつけられている。
小さい本だし、男性集会や夫婦セミナーでの挿話は日常的でわかりやすいから、すぐ読める。しかし、提起された問題は重く残る。そこで語られることには、霊の世界の深奥を垣間見せる深みがある。特に夫婦の愛と神に対する信仰を育てるためには、今の自分にとってはまったくわからない闇の世界に飛び込む、まるで暗夜の行路に出発するような勇気が必要であることを説くあたりに、深い洞察と真摯な探求の姿勢がうかがわれる。
花にたとえての愛の交歓も、単なる楽しいゲームで終わらず、闇の深さに立ち向かわせるものとなっている。夫婦の交わりの深化が、神との霊的な交わりの成熟への歩みと重なっていることについては、評者も著者の語ることに深い共感を覚える。
取り上げられている挿話すべてに対する著者の鋭い観察と暖かいまなざしは、読む者を喜ばせてくれる。事例はすべて身につまされるもので、考えさせられることが多い。奥様やお子様がたに対する思いが記されているところでは、著者の家族愛が伝わってくる。
多くの人びとに読まれ、愛をもって共に霊の歌を奏でる夫婦が次々と育てられることを切に願っている。