ブック・レビュー 『子どもたちに寄り添う』

『子どもたちに寄り添う』
小暮修也
明治学院高校副校長
フリーザチルドレン明学顧問

涙が止まらないのは、坪井さんの姿に胸を打たれるから

 坪井さんの話は、何度聞いても涙があふれてくる。この本も電車の中で、バスの中で、自宅の居間で読み、涙が止まらなくなった。なぜ涙がこぼれてくるのか。それは、過酷な状況に追い込まれ、傷ついた子どもたちの心に寄り添おうとする坪井さんの姿に胸を打たれるからだ。

 しかし、子どもたちに寄り添うことは生半可ではない。いじめ、体罰、虐待、子ども買春、自殺未遂の中で、心身ともにぼろぼろになった子どもは大人不信となり、生きていてもしかたがないと追い込まれる。その子どもに「生きていてほしい」と訴える坪井さんは弁護士としてより、ひとりの人間として向き合おうとしている。

 このような坪井さんも子どもたちの人権救済活動に取り組む中で、ご自身の無力さに打ちのめされたという(三頁)。なすすべのない中で、イエスが子どもに寄り添い、孤独や人間不信をいやしてくださるように祈った。そのようなとき、教会から離れていた坪井さん自身が神への祈りに導かれていった(一二二頁)。

 助けようと思っていた者が助けられる。教えようとした子どもから教えられる。これは私たちも経験がある。このような活動を通して、坪井さんは、苦しんでいる子どもが求めていることは、解決策や回答を与えてくれる人ではなく、一緒に悲しみ、苦しんで考えてくれる人、あなたに生きていてほしいと伝えることではないかと考えた。

 これは子どもに接する多くの者たちが心すべき普遍的な姿勢ではないか。私たちにもまた「ありのままのあなたでよい」「あなたの人生はあなたのもの」「あなたはひとりぼっちではない」という言葉を、子どもたちに、そして大人たちに伝えていくことが、今、この時代に求められている。

 本書を読み、傷ついている日本や世界の子どもたちのことに思いを馳せてゆきたい。