ブック・レビュー 『希望とは何ですか』

『 実を結ぶリーダーシップ 』
池田 博
日本福音キリスト教会連合 本郷台キリスト教会牧師

希望、それは人間に与えられた生きる力

希望、それは人間に与えられた生きる力です。そして決して消えることない光です。
まず、序文の言葉に心が留まりました。
「この国には何でもある。……だが希望だけがない」。これはまさに、今日の日本の精神的貧困の姿でありましょう。そして、東京大学社会科学研究所が世界初の「希望学」を二〇〇五年に発足させたとのこと。それが社会的に大変反響を呼んでいるといいます。それはとりもなおさず、現代社会に求められているニーズであるということでしょう。
本書は信仰、希望、愛の三部作シリーズの第二部です。しかし著者は「希望」こそ書きたいテーマ、否、現代に書かなければならない一大テーマだと言います。信仰がテーマの書物は、希望の「少なく見積もっても百倍はあります。愛についての書籍も百倍ではきかないと思います」(はじめにより)。しかし時代は、人々は、「希望」こそが一大関心事。そして緊急必要事態だというのです。著者にとっても一大関心事であるだけに、思い入れ深く取り組んでおられます。ご自分の体験がおりなされているのが大変興味深く、引き寄せられて一気に読ませていただいた次第でした。
なぜ希望なのか。その社会的必要性と共に、それは誰よりも著者自身が心の奥で希求していたものでした。著者はほとんど「希望」とは縁のない家庭環境に育ちました。中学、高校と暗い中に失望と落胆の生活を送り、まさに「落ちこぼれ症候群」の候補生。それだけに心の深い所で強くあがいていたのでした。それまで全くキリスト教に接点がなかった所に、十五歳の時ふとしたことから、教会に行く機会が与えられたのです。そこで、それまで全くなかった「希望」が噴き出したのでした。なんと教会に行ったその日に著者は、「牧師になりたい」と渇望したというのです。それが何をするのかの意味を定かに知らない中にです。まさに闇に光の「希望」が誕生したのです。著者は聖書を土台に「希望学」を体系化したいと熱く記しています。期待していきたいです。