ブック・レビュー 『心をいやす55のメッセージ』

心をいやす55のメッセージ
鍋谷 堯爾
神戸ルーテル神学校 教授

みことばと祈りをとおして、神の愛に生かされた者に示される「ひらめき」

 著者は、日本におけるホスピス医療の草分けであり、現在も大学教授として活躍、また淀川キリスト教病院名誉ホスピス長として、日本のホスピス運動を推進している第一人者である。それゆえ、すでに『生と死を支える――ホスピス・ケアの実践』(朝日新聞社)『死をみとる一週間』(医学書院)などホスピスに関する多くの著書がある。

 本書は、これまでの著作の流れからいえば異色である。聖書のみことばが最初にあり、著者が日常生活をとおして、みことばの広さ深さを、どのように理解したかをわかりやすく述べている。一九九七年から二〇〇一年の五年間の病院での朝礼のメッセージをベースとしている。

 淀川キリスト教病院は、新大阪駅を出た東京行の新幹線からすぐ右手の淀川側に見えるキリスト教病院で、一九五五年創立以来もうすぐ五十年、ベッド数五百二十、医師、看護婦、職員千人を擁している。全人医療をモットーとし、毎朝八時半から四五分まで三百人弱の出席者による礼拝からすべての働きが始まっている。

 五十五のメッセージは、どこにも著者の日常生活の中に、神の愛に支えられた者のみが発見しうる洞察がこめられている。家庭の日常生活の隅々、職場の出来事、何気ない会話、また著者自身の人生の節目などあらゆる面に及んでいる。日常生活の大きな事も、小さな事にも、神のみことばと祈りをとおして、神の愛に生かされた者に示される「ひらめき」、それが、本人を生かし、また他者との関係を修復し、新たな息吹を与える。それは、病院の世界だけではなく、人生のすべてにあてはまる。

 五十五のメッセージを毎日一つずつ読むのもよし、気分を転換するために何か一つのメッセージを聞くもよし、分類および主題によって研究会や親睦会の話題にするもよし、また受洗祝いやクリスマスにあたって格好の贈り物にするもよし、広い範囲に用いられる好著である。