ブック・レビュー 『恵みあふれる聖書の世界』
「ヨハネの手紙」を味わう
遠藤勝信
日本同盟基督教団・小平聖書キリスト教会牧師
イエス様の恵みとまことがあふれる説教を
本著は、著者がメールマガジン『恵みあふれる聖書の世界』に連載してきたもののなかから、ヨハネの手紙(第一から第三)を講解したものをまとめたものである。著者は、城山キリスト教会の牧師であるとともに、キリスト教テレビ番組「ライフライン」の司会者、ラジオ番組「世の光」のメッセンジャーとして、広く、福音を語る伝道者である。メディアを通しての働きには、時流に対する敏感さと、世の人々の必要を見抜く洞察力が求められる。それとともに、この世が決して与えることのできないもの、福音の本質をつかんでいる必要がある。
著者は「あとがき」で、「私は、今まで恵みとまことに満ちておられるイエス様をどれだけ語ってきただろうか」と振り返り、「これからは、イエス様の恵みとまことがいつもあふれる説教をさせていただきたい! そう心から願った」と述べておられる。
本著が、『恵みあふれる聖書の世界』と題され、「『ヨハネの手紙』を味わう」という副題が付されたことにも、聖書から「何を語るのか」、また「聖書を読むとは、どういうことなのか」ということについての著者の主張と願いが表わされている。
著者が想定する読者は、主に、聖書を読みはじめたばかりの人々、もしくは、信仰生活をはじめたばかりの人々であろう。その彼らに、イエス様を信じ、救われるとは、具体的にどういうことなのかを丁寧に説き明かしている。
ヨハネの手紙には、信仰義認、聖化という主題、異端の問題、また、難解な個所も含まれるが、無理のない解説が施されている。また、信仰生活を豊かにする秘訣(例えば、祈りについて)とともに、陥りやすい失敗や間違いにも触れ、健全で、息切れしない信仰生活の秘訣を教えている。
各章は、一節ずつ、一分ほどで読める分量で記されており、朝夕のディボーションにも最適と思われるが、何よりも求道者の方への手引き書として大いに用いられる一冊である。