ブック・レビュー 『愛する人と自分のためのキリスト教葬儀』
水間 照弥
日本ホーリネス教団・新井キリスト教会牧師
仏式葬儀が圧倒する日本において力強い味方ができた
三浦綾子さんは、最晩年に「私には、まだ死ぬという仕事が残っている」と言われたそうですが、そのとおり、人間誰しもがこの仕事に取り組まなければなりません。さらに、死者を送る葬送の務めとしての葬儀の取り組みという仕事があります。この葬儀の務めは、ほとんどの人にとって初めての、突然の、一世一代の経験であるため、戸惑いも大変なものがあります。まして、仏式による葬儀が圧倒する日本において、マイノリティーであるクリスチャンにとっては、その戸惑いは半端なものではありません。そんな私たちに力強い味方ができました。それは、水野健牧師による『愛する人と自分のためのキリスト教葬儀』という本が出たからです。著者は仏教王国と言われている金沢の生まれ育ちという背景をお持ちで、このテーマで発言するためのノウハウやハウツーを十分に持っておられる方です。また、著者はこのテーマについての勉強をなされ、豊かな知識を持ち、さらに、現場経験を数多く積まれ、現場感覚にも富んでおられます。
そしてそのことが文章のあちらこちらに表されています。日本の葬儀の歴史についてのくだりで、キリスト教がザビエルによって伝えられた時、宣教師たちは野捨て状態で扱われた一般庶民を手厚く葬った事例や、お墓を造って丁重に埋葬した事例などを紹介して、今日のキリスト教会やクリスチャンは「お墓や先祖を粗末に扱う」との批判に答えています。
さらに、教会やクリスチャンたちに、キリスト教式葬儀のあり方とはどのようなものであるか、また、キリスト教式葬儀が日本宣教にどれほど貢献するものであるかを熱く書いています。
その他、死者が出た時からの手順、前夜式、葬儀とそのプログラム、納骨(埋葬)、お墓、ご会葬返礼品、遺族の服装、葬儀費用、牧師・葬儀社との関係など、かくありき調ではなく、歴史や現実を踏まえて親切に書かれていて、牧師や信徒の方々にお薦めの一冊です。