ブック・レビュー 『教会から
クリスチャンホームの子が
いなくなる』
小林久実
日本福音自由教会協議会 向島福音自由教会 牧師
教会の若者に聖書の価値観をどう伝えるのか?
「単純だけれど、簡単ではないのですよ」。牧師である登場人物のひとりがこう語った。自分の息子が学校で不正行為をしたことから、家庭内で聖書の価値観を伝えることに失敗していたことに気づかされ、神のお取り扱いを受けた。その体験をメッセージで語ると、同じような課題を抱える親たちが自発的に集まるようになった。その場で語られたのが、冒頭の言葉である。真理そのものは、わかってしまえば単純なものである。だからと言って、この世の激しい流れの中に置かれた子どもたちに、真理を伝え根付かせることは決して簡単ではない。そこに気づいた人々が取り組みを始めたのだ。
日本語の題名にもドキリとさせられるが、読み始めると、さらにショッキングな現実に直面させられる。このようなことは、遠い国のことではなく、現代日本でも起こっているのだ。しかし、目をそむけたり、あきらめたりしてはならない。それではサタンの思うつぼだ。
本書は、十年前にアメリカで書かれた。実際の出来事、教会での取り組み、そして実用的な教育プログラムが記されている。ただ騒ぎ立てるやじ馬のようではなく、自分を責任の外に置く評論家のようでもなく、子どもたちを愛し、情熱を注いで彼らのために取り組む一実践者、教育者として、鋭い時代分析と具体的対応を提供している。分厚い書であるが、内容に引き込まれる。
クリスチャンの子どもたち、明確に新生した子どもたち、未信者の子どもたちに対する詳細なアンケート結果とその分析も掲載されている。
教会の子どもたちを育てるためには、親に第一の責任があることが明確にされている。この書のゴールは、教会の若者たちに、聖書の価値観を強くしみこませることである。日本の教会にまさに必要な書である。困難は決して小さくはないが、聖書を中心に据えた対応策もあるのだ。希望の光が見える。