ブック・レビュー 『教会がカルト化するとき』
村上 密
日本アッセンブリー・オブ・ゴッド教団 京都教会 牧師
カルト化した教会への目薬
ウッド師は日本における異端・カルト問題の第一人者です。長く脱マインド・コントロールに取り組んでこられました。私たちはこれまで著者の尊い財産と言うべき知的結晶物を安い使用料をはらって大いに活用させていただきました。このたび『教会がカルト化するとき』を出版されました。味読し、ラオデキヤにある教会(黙示録の七つの教会の一つ)に書き送られた手紙のように思えました。主の御名によって建てられた教会がカルト的になってはいないか。用いてはならない方法論によって教会形成がなされてはいないか。「目が見えるようになるため、目に塗る目薬を買いなさい」(黙示録3:18)と御霊が諸教会に言われているように思えます。
これまでの異端・カルト関係の本は外に向けられた声とするならば、今回は内に向けられた声です。書き上げるまでの苦悩が「まえがき」と「あとがき」から伝わってきます。今日的問題であり、終末論的問題である「教会がカルト化するとき」を取り上げられた勇気を高く評価すると同時に、読者と共に祈りの支援をしたいと思います。
本書の目的は明白です。「人をさばくことではありません。ただ、健全な教会形成や、日本の福音化を妨げている深刻な問題を認識してほしいのです」「問題を未然に防ぐために必要な、『良い物と悪い物とを見分ける感覚』(ヘブル5:14)を養い育てることにあります」と祈りにも似た言葉を著者は書いています。
本書の内容は、前半で問題提起をし、実話と的確な聖書個所をもって「教えと戒めと矯正と義の訓練」(2テモテ3:16)を試み、後半でカルト化に対する処方箋を書いています。マインド・コントロールを解くことのできる著者は、それを駆けることをしません。本書は、その誘惑に勝利した者のみがもつ表現力をもっています。