ブック・レビュー 『教会とは何か?』

『教会とは何か?』
淵上行道
日本福音キリスト教会連合 丸亀聖書教会牧師

宣教協力をしていく上での重要な基盤となる

 かれこれ七、八年前のこと。地方教会に仕える一牧師として教会形成のあり方と方向性について自問自答し悪戦苦闘するなかで、畏友である鞭木由行師に紹介されたものがこのたび、同師によって訳された『教会とは何か?』であった。評者は地方教会に仕える者として、「主にあって教会はひとつ」と教会一致運動が叫ばれ、宣教協力のための教会の一致と宣教プログラムが推進されるなか、多勢に無勢的宣教協力のあり方に、日ごろから問題意識を持っている。

 キリストの体としての多様性における教会の一致は、聖書が語る大事な事柄である。しかし、信者獲得のための「皆でやれば○○式」伝道論や、「多様性における一致」ではなく「多様の一致」による宣教協力(信仰告白・教理の違いを超えて)によって教会が数量的に勢力を増強し、エキュメニカル運動と結びついた宣教のあり方に警戒と疑義を強く感じている。ある方々は、このような姿勢に偏屈さ、狭量さ、不寛容さを覚え「だから日本の教会は伸展しない」と異議を唱えられるであろうが。

 本書では、この教会一致運動における問題点、教会の本質や宣教のあり方について単刀直入に、使徒の働きの二章全体から語っている。この本を読み終え、本書こそ、安易に教会一致を求める人たちへの警鐘となる書物であると強く思わされた。なぜなら、多種多様な教会が一致・協力して宣教していく上で重要な基盤となる教会理解において必要不可欠になる「聖書の指し示す教会のあり方」が示されているからである。

 これから評者が「教会とは何か」と教会の本質について、また「伝道とは何か」「説教とは何か」と信者・未信者を問わず尋ねられる時、難解な教会や説教についての教理教本や伝道方策論の本を提示する前に、まずこの本を紹介することになるであろう。その意味でこの本は、すべての教会の牧師・信徒の座右の書として、また、教会図書必須の書として読まれたい本であると思う。