ブック・レビュー 『日本宣教の夜明け』

『日本宣教の夜明け』
石川 正
日本同盟基督教団 名古屋めぐみ教会牧師

四十七都道府県でのプロテスタント宣教事始め

 本書は、プロテスタント宣教一五〇周年を記念して出版されたものです。これまでに、通史としての日本プロテスタント史はあっても、各地方ごとの宣教の歴史を一冊の本にしたものがありませんでした。学術書ではありませんが、専門家にも目を通して頂きたい本です。

 まず、四十七都道府県別にプロテスタント宣教の始めの物語がまとめられていることに頭が下がります。次に、メモ程度ですがキリシタン関係の資料も掲載されています。このように各地方の歴史をまとめることができたのは、ジャーナリストとして、日本各地を取材して回った著者であればこそ成しえた偉業であると思います。

 各地方に福音がどのように伝えられたかが、わずか四ページ(平均)の中によくまとめられています。また、「もりべえのへえー」というコラムが九項目あり、読者を飽きさせません。「荒城の月」がヨーロッパで賛美歌となっているエピソードには驚きました。京都は、我が国最初の博覧会が伝道の門戸を開くきっかけになるなど、各地方の宣教は多様で興味深いものです。ユダヤ人の歴史観は、手漕ぎのボートにたとえられます。過去を見据えて、未来に向う訳です。この本には、これからの日本の宣教を考えるヒントが埋もれているように思います。

 よき信仰とよき生活のあかしに生きていた宣教師と出会い、福音を知り、回心した各地方の人々は、福音を自分の郷里の人々に届ける使命を強く抱きました。福音を届けようとする情熱です。それは、宣教師が持っていたものです。

 この本には、各地域毎に教会未設置場所が地図を添えて紹介されています。地方の過疎化の原因は、団塊の世代が地方から都市へ集団移住した結果であるとする見解があります。この団塊の世代のクリスチャンが、福音を携えて郷里に戻る。読み終わった後、そんな幻を抱きました。