ブック・レビュー 『流れる風の声』
しみじみ牧師の礼拝使信
山北宣久
日本基督教団 総会議長聖ヶ丘教会 牧師
み言葉を平易に深く伝える賜物がいかんなく発揮されて
題名といい、ブルーの表紙絵といい、時代の閉塞感を拭き払う爽やかさに満ちている。しかし何といってもその爽やかさは風(聖霊)の息吹きを満載した一八四の福音メッセージからもたらされる。アライアンス教団の四重の福音「救い主・潔め主・癒し主・再臨の主」に基いた教会暦により旧新約聖書を網羅しつつ一頁に一篇のショートメッセージが放たれる。呉教会の教会報からの抜粋であるが、こんな良質の内容に接し得る教会員は幸いなるかなである。呉教会の人々はクレグレも感謝するように。
小宮山林也牧師を助け伝道牧会に専念された副牧師たる母親へのレクイエムのかたちをとっている本書であるが、信仰の継承・牧師になるための祈りに裏打ちされた薫陶がハンナのように、母モニカの如く結実している好例としても受け止められる。
両親の愛を豊かに受けて育てられた賜夫牧師は名を体としてみ言葉を平易にしかも深く伝える賜物を、まさに「流れる風の声」としていかんなく発揮している。
暖かく包容力に富んだ人柄にふさわしく「心に主の愛溢れて歌いましょう。心に主の声聴きつつ歩みましょう。心に御姿映して生きましょう」といった「~しよう」という終り方が八十七章。「あなたが忍耐を持って信じ、希望を持って歩むなら、キリストの愛の香りを放つ者とされるのです」といった「~です」の結び方が六十四章。つまり招きと確信が各章を貫く。さらに「あなたの望みはどこにありますか」と問いでしめくくる文が二十六章と読者との対話姿勢を崩していない。
やや片寄りもあるが、引用も多いし体験による例話も説得力を増し読みやすい。何より聖句そのものが新鮮に迫ってくるところが本書の特長であり、強みだ。
本書の産婆役、中野雄一郎牧師が「私は続篇の出版されることをも期待しつつ」と推薦しておられるが、同感である。「風立ちぬさらば生きめやも」(堀辰雄)をあなたも「流れる風の声」で生き直して。