ブック・レビュー 『牧師の責任 信徒の責任』
矢木良雄
イムマヌエル綜合伝道団・桂町キリスト教会牧師
「責任」を切り口に教会の健全なあり方を探る
野田秀先生は、桜ヶ丘教会を五十年以上にわたって牧会された大先輩である。だからこそ、「牧師の責任 信徒の責任」という、一瞬たじろいでしまうような題がよく似合う。本書は、目次では二部構成になっているが、実質三部からなる。付論とされているが、これだけは言っておきたいと考えられたのであろう、「正論について」の章が真ん中に置かれている。
前半では、責任の意味と内容が一般論から説き起こされている。そこでは、果たすべき責任と負うべき責任、責任感がどのように育まれるか、行き過ぎた責任感など、明快な切り口で分析される。責任を考える上で大切な要素が三点あげられる。責任に忠実であること、立場や使命に対して謙虚であること、他との信頼と協調である。
本題に入り、「牧師の責任」は四つの言葉で整理される。「方向づける」「意味づける」「結びつける」「力づける」。その分析と示唆は、牧会者としての姿勢を再考させずにおられない鋭さがある。同時に、先生ご自身の失敗体験をありのままに記しておられるゆえであろう、温かい励ましを感じる。
次に「信徒の責任」は三つの項目、「教会を理解する責任」「恵みに応答する責任」「教会に協力する責任」からなる。その中で、教会生活が普段の生活全般を支えるような位置に置かれているかが問われている。教会内で「信徒の責任」などと正面切って取り上げることは容易でない。ここはぜひ、牧師と信徒がいっしょに読んで学んでみてはいかがだろうか。
「正論について」は、特にまじめで熱心な信仰者が熟読すべき章である。正論を語るとき、傲慢と自己陶酔の罠に気づいていないかもしれないからである。
後半は、教会の機関誌に掲載されたメッセージが集められている。信徒の方々がみことばを語る機会も増えている。著者に助けられながら、聖書を読み解く手ほどきを受けていると考えて読んではいかがだろうか。聖書の味わいがぐんと増すにちがいない。