ブック・レビュー 『真のキリスト者への道』
石原 潔
日本ホーリネス教団 小平キリスト教会 牧師
聖書的キリスト者のアイデンティティー
本書は、「永遠不変であるべき真の聖書的キリスト者の生きざまを読者とともに追い求め、現代における生きたキリスト者像を回復するとともに、聖書の本質に根ざした二十一世紀のキリスト者のアイデンティティーを再確認したい」(5頁)との著者の意図に従い、著者が牧会する淀橋教会で信徒育成のために礼拝で語られ、機関誌「陽光」に掲載されたものを編集し、さらにいくつかの説教が文章化されて加えられたものである。したがって、いわゆる「説教集」という類のものとは異なり、読者をして「本質的かつ聖書的キリスト者像」を仰ぎ見させることに焦点を持つ「信仰の手引書」でもある。分かりやすい文章で綴られてはいるが、救済論から教会論へ、さらに宣教論への展開が本書の骨子となっている。本書の内容は、[1]真の信仰生活、[2]真の聖潔の生涯、[3]真の教会生活と祈り、[4]真の宣教、[5]その他、に分けられている。しかもこの順序が、キリスト者の歩みにマッチしている点に注目したい。すなわち「救い」の恵みに生かされた者が「聖化」され、「聖化」された者がキリストの体なる教会の一員としていかに生き、さらに教会に連なる者として、教会に託された「宣教」の使命をいかなる精神をもって遂行していくべきかが明らかにされている。
一読して明らかなことは、著者が「聖潔」の信仰に立つのみか、その信仰に生き、さらに読者がいかにしてその信仰に到達し、それを維持できるかが端的な言葉で随所に勧められていることである。
そして、最後の「[5]その他」では、第二次世界大戦下でこの「聖潔」の信仰に立ち、獄中生活を余儀なくされた数人の先達の生きざまの一部が紹介され、二十一世紀のキリスト者のアイデンティティー確立に強烈なインパクトを与えている。
本書が、生きたキリスト者となることを心から願っている方々の座右の書となるのみか、信徒の育成を目指すテキストとして広く読まれるように心からお勧めする。