ブック・レビュー 『神様の一粒の麦』
石原 伸光
日本同盟基督教団 波崎キリスト教会 牧師
苦しみを通して発見したみことばの深い真理
本書は、『神様の絵の具』(いのちのことば社刊)に続く故能登一郎牧師のガン闘病中に語られた説教集です。能登牧師は、病気のため牧師を辞任後も、「御言葉を語ることはできる。そしてそれが神様に仕える方法だ!」(一一頁)と示され、闘病中に出席する垂穂キリスト教会で可能な限り、みことばの奉仕を続けました。本書にはそのときに語られた九つの説教が掲載されています。痛みと闘いながら全身全霊で語る説教ですが、気負いはなく、ユーモアあり、失敗談ありで、みことばの深い解き明かしに読者の心を惹きつけます。本書を読むうちに、能登牧師の信仰が試練を通して練られ、三十代の若さで成熟した信仰者、説教者になっていったことがわかります。「神様は私たちの成長のために苦しみを与えられる」と語る説教は、彼の人生において裏づけされます。
能登牧師の説教は、何よりもまず聖書的です。聖書はどう言っているのかが彼の関心事であり、聖書全体からみことばを解き明かします。また自らの試練を通して教えられたみことばの真理を解き明かします。能登牧師の説教が多くの人々の心に深い感動を与えるのは、彼の苦しみを通して発見したみことばの深い真理が解き明かされているからです。
また彼の説教は、福音的です。その説教の中心はキリストの十字架と復活です。十字架に現された神の愛の大きさ、罪の赦しの確かさ、キリストの血の尊さ、また復活によって示された苦難の後にある栄光と勝利が解き明かされます。そしてキリストこそ人生のあらゆる問題の答えであることが示されます。
本書は、今苦しみの中にある者には、みことばによる解決を与え、今苦しみを経験していない者には、将来の苦しみに対する霊的備えを与えてくれます。「彼は死にましたが、その信仰によって、今もなお語っています。」
能登牧師の信仰の結晶である本書が、多くの人々の心にみことばの真理を語り続けることを心から願っています。