ブック・レビュー 『神様 あなたに 会いたくなった』
小澤 則男
茨城キリスト教学園高等学校 教諭
明るく清清しい世界が、新しい色彩を放って私たちの前に広がる
雲 くものある日
くもは かなしい
くものない日
そらは さびしい
八木重吉詩
四月、教室の壁に、模造紙に書いて貼り出した二篇の詩の一つがこれ。
八木重吉の詩を教室に貼り出しておくと、教室の雰囲気が何とも好い。生徒たちからの様々な反応がある。初々しい彼らの心の奥深い世界に、重吉の詩情が滴り落ち、静かに語りかけるのだ。
さて、この度、重吉没後七十五年の記念の日に、素敵な詩画集が生まれた。
誠実な高校教師であり、真摯にキリストを仰ぎ、厳しく己を見つめ、一途に一念に神を求めて生き切った詩人。その苛烈なまでの信仰の証しともえいる夥しい詩篇。それは一方で、読む者の心を清浄にし、冬のひだまりのように、静かで優しい温みを持つ。その中から選び抜かれた一篇一篇の、珠玉の詩語の世界を、画人は色と形で、自己の深層から湧き出る詩想のままに描く。
二人の詩情が溶け合って創り出された、深く静かな世界、明るく清清しい世界は、新しい色彩を放って私たちの前に広がる。
『神様 あなたに会いたくなった』、重吉の誠に偽らざる、心からの叫びだ。ここに読者は、重吉の純粋に、あまりにも純粋に澄み切った眼差しを感じるに違いない。
二十一世紀に入り、ますます深刻化する人々の潤いを失った病める魂。その救済が叫ばれて久しい今日にあって、この叙情が、若々しい多くの学生達や、大人達の心の糧となることを祈ってやまない。