ブック・レビュー 『私の歩みを一歩ずつ導かれる神』
――伴侶を天に送って
舟喜 信
聖書宣教会 会長
主の力は「弱さのうちに完全にあらわれる」
この本は主から私たちへの特別の贈り物です。一読し、また振り返って読みながら感じました。主キリストに出会い、永遠のいのちを与えられ、今この国に生かされている私たちひとりひとりのために、主ご自身が、著者を用いて本書を与えてくださったのだと。書名が示すように、本書は信仰の証しの書です。多様な状況で主がお導きくださった事実そのものを、ときに詳細に、淡々として語っています。読者はその一つ一つの局面で、多くを教えられ、また問われるでしょう。しかし私自身は、全体を貫く、光り輝くものに深い感動を覚えました。それは「わたしの力は、弱さのうちに完全に現われる」(IIコリント12・9)というみことばとその真理の輝きであり、みことばの主である神ご自身の栄光の輝きです。著者も本書で「このおことばの意味、イエスさまのお力を、もっともっと味わわさせていただきたい」(202頁)と証ししています。事実、このみことばの真実に生かされ続けてこそのご夫妻の働きであったといってもよいでしょう。
本書は著者が、文字通りの同労者である愛する夫、井戸垣彰牧師を天に送られ、その衝撃からまだ立ち直られていない状況で書かれました。執筆に至る動機について著者は、このような「弱さ」の中で、主に導かれての一歩一歩を書くことによって「同じ立場にある方々と共に悲しんだり、共に慰めあったりできないものかと考えた」と語っています。聖霊はこのような「弱さ」の中でこそ働いてくださるでしょう。
この「弱さ」はご夫妻の三十数年の共なる奉仕――「苦しみとともに実りの豊かなものでした」――の中で養われたのではないでしょうか。井戸垣牧師は奉仕の初期と終わりの時期の二度も死の宣告を受けました。著者も体に痛みを覚えない日はないほどでした。このように体の「弱さ」を覚えながら牧会を続けたのです。それはキリストの力が、お二人とその働きをおおうためだったと私は信じます。
お二人のキリストとその教会への愛、みことばへの徹底した信頼、聖潔への渇きは、主の力が「弱さ」のうちに完全に現われることを知る者のしるしなのではないでしょうか。