ブック・レビュー 『私は私らしく』
赤松 敬明
日本基督教団 坂城栄光教会 牧師
今も生きて用いられている瞬きの詩人、水野源三
瞬きの詩人、水野源三の詩集が、このたび形を変えて、新たに出版されました。それを持参し、坂城を訪れてくださった、編集者の鴻海誠氏からいただき、新鮮な思いで拝見しました。タイトルとなっている『私は私らしく』は、源三の晩年に近い一九八二年の「生きる」という作品の最後の一節からとられたものです。私は十六年前に、この坂城の地に導かれたとき、この詩に出会い、非常に心に残ったことを覚えています。
また収録されているのは、一九八一、八二年の作品が多く十三篇、一九七〇年代のものが七篇、一九六〇年代のものが二篇、計二十二篇の詩です。これらのすべてが英訳されているのは、斬新で新しい時代を感じさせてくれます。困難をともなう表現を、非常に素直にまとめられているので、源三の心をとてもよくとらえていると感じました。
さらに森住ゆきさんのちぎり絵も、みごとに詩の情景が表現され、詩をいっそう浮き立たせているように思えます。源三の詩の根源には、「キリストにお会いしてから、私の心がかわった」(一九七四年作)という救いがあります。しかし、「ありがとう」(一九頁)という詩には、「神」「主」「キリスト」ということばは、まったく登場しませんが、みごとに救いの喜びをうたいあげています。
こちらの坂城小学校ではつい先日、体育祭に源三の詩の朗読を行い、参加者の多くに感動を与えました。彼の没後十年、ビデオ、コンサート、源三の記念コーナーを併設した教会堂の建築などを通して、坂城の方々も彼の真価を知るようになりました。源三を信仰に導いた宮尾隆邦牧師、教会堂のために五百坪の用地をささげた故神戸信雄氏など、福音のために主が立てられた方々を通して、主のご計画は着実に進められていきました。そして没後十八年を迎え、源三は今も生きて用いられています。たくさんの人々に思いを起こさせて……。
この斬新な詩集も、主が豊かに用いられることを信じて、祈りつつ、主に聴従する歩みを続けていきたく思います。