ブック・レビュー 『聖書が語る真実のイエス』

『聖書が語る真実のイエス』
宇田 理
日本大学商学部 教員

真実のイエスを改めて確認したいと思う方に

  イエスに向かって祈り始めたはずなのに、いつの間にか、自分に向かっているのを経験したことはないだろうか。いつの間にか願いばかりの祈りになっている。そればかりかイエスのすばらしさは、すでにわかっていると思い込んでしまっている。少なくとも私はそうだ。日々の祈りの中でイエスを覚えながらも、真実のイエスの姿を改めて確認する機会が少ないのかもしれない。

 これに応えてくるのが本書である。「イエスはどんな人物だったのか、現在どのようなお方であるのか」を改めて考えさせてくれる。本書は、聖書に描かれたイエスの姿をそのまま浮かび上がらせようとしている。どの章もイエスを描写した生きたみことばであふれている。しかし、ただイエスの姿を見つめるだけで終わらない。著者が「イエス・キリストを味わうことは、霊的に見るという行為への応答です」と述べているように、章の最後は祈りで締めくくられている。それは自分なりのイエス像でもなく、イエスのプロフィール(横顔)でもない。まさに御霊なる主の働きによって真実のイエスを気づかせてくれるものだ。真実のイエスの姿を改めて確認したいと思っている方に、ぜひデボーションで使っていただきたい本である。

 最後に著者のジョン・パイパー氏について紹介しておきたい。評者が研究で米国はミネソタを訪れた際に礼拝を守ったのが、彼が牧師を務めるベツレヘム・バプテスト教会であった。千人は収容できる礼拝堂に響き渡る彼のメッセージはシンプルなようでいて深く、両手を大きく広げて語りかける姿には威厳が感じられるが、その眼差しはやさしさであふれ、真実のイエスを伝えたいという気持ちが伝わってくる。同教会のホームページ(www.bbcmpls.org/)で彼のメッセージ(英文)が読める。本書と合わせて見ていただきたい。彼は福音派系の週刊誌『ワールド』のシニアライターでもあり、毎回心に刺さるコラムを寄稿している。