ブック・レビュー 『聖書は女性をどう見るか』
神津 喜代子
日本バプテスト教会連合 大野キリスト教会 主事
女性に対する神の視点を共有してほしい
稲垣緋紗子氏とは、日本福音連盟(JEA)女性委員として、約六年、ご一緒に奉仕させていただいた。時にはさらりと思いきった提言をされ、会議の流れに色合いを加えたりした。私は羨望と驚きをもってさわやかなその横顔を見つめたものだ。そのまなざしや口調が、そのまま文章化されたような、実に歯切れのよい著書である。本書の書かれた目的は、著者が記しているように「聖書が女性について何を教えているか、旧約聖書から新約聖書を貫いている一定の視点を見いだすこと」である。著者は、この膨大な課題に真正面から向き合う。しかも、「謎解きの気分を味わえるかもしれません」と微笑むのである。読む前から、何ともおおらかで爽快な気分にさせてくれる。
字が大きく、主題ごとに見開きでまとめてあるので読みやすい。また、文章力、表現力も抜群である。
本書は、世界福音同盟女性委員会が二〇〇〇年に英語で単行本にまとめた「賜物に性による差はあるかとの問いをめぐって」にさらなる解釈を加え、執筆された。
私が属するJEA女性委員会では、現在この同じテキストを少しづつ翻訳しながら学んでいる。言い換えれば、それほど目新しい画期的な内容ということになる。
それだけに、難解な個所や斬新な解釈も目に付く。それを著者は、ほとんどためらいなく、堂々と自論を展開していく。
文体は簡潔で言い切り型であり、回りくどくない。難解な個所を、もしかしたら誤解されそうなほど、あっさりと釈義し、まとめていく。小気味よいほど軽快な文体である。
切り口の斬新さ、鋭さに唸りながらも、ここまで言い切ってよいのかと、私は臆病にさえなる。とにかく一度読んでほしい。そして、彼女が心から願っている女性に対する神の視点を、信仰をもって共有してほしい。そう願う。