ブック・レビュー 『聖書翻訳を考える』
─『新改訳聖書』第三版の出版に際して
喜友名 朝英
日本同盟基督教団 沖縄中央教会 牧師
教会の歩みとしての聖書翻訳
「聖書は誤りない神のことばであって、信仰と生活の唯一絶対の規範である」と信じる者にとって、日ごと読んでいる聖書がどのように自国語に翻訳されたのかということは、強い関心事になるのではないでしょうか。今秋発行された『聖書翻訳を考える─「新改訳聖書」第三版の出版に際して』は、まさに『新改訳聖書』の翻訳の事情を知ろうとする者にとって格好の書です。聖書翻訳とは重要で難しい課題です。まさに、本書に「古代世界でのメタファー、慣用表現などを、異なった時代・文化の言語である日本語に移すということは、本文原典の理解から始まり、日本語の問題に及ぶ」(二十、二十一頁)と、書かれているとおりです。
翻訳の善し悪しは、依拠する翻訳方針に基づいて評価されます。『新改訳聖書』では、一番はじめにその翻訳方針が次のように記載されています。
「一、原典にできるだけ忠実であること。二、文法的に正確であること。三、一般の人々に理解できるものであること。四、主イエス・キリストの占められるべき地位、みことばが主にささげている地位を正しく認めること。そして、この業績は決して個人に帰せられるべきものではない。」
この視点で本書を読むと、『新改訳聖書』の翻訳では、「理解できること」よりも「原典に忠実であること」に重点が置かれてきたことが明確に分かってくるでしょう。そして、それを理解することによって「聖書は神のことばである」という確信を深め、聖書信仰が耕され、強固にされることでしょう。
多くの方々が、個人でまたはグループで、繰り返し精読されることをお勧めします。