ブック・レビュー 『育てるいのち 看取るいのち』
希望をたずさえて
熊澤喜久子
日本基督教団・平塚富士見町教会員
ご夫妻のあたたかさに触れることのできる本
もう十数年も前になるでしょうか。夫と共に招かれた台湾で、同じ会合に招かれていらした柏木哲夫先生と一晩宿を共にした時がありました。あこがれの先生に初めてお会いし、質問したいことが山ほどありましたが、せっかくのチャンスでしたのに何も伺うことができず、残念な思いをしたことがありました。
今回、精神科医の柏木哲夫先生と、心理学者である道子夫人との対談という形をとって、お二人の出会いから現在までが、雑誌「百万人の福音」に連載されたものを、今回まとめて一冊の本として出版された本書を読む機会を与えられました。
読んでみて、かつて山ほどあった質問に全部答えていただいた以上に、多くのことを与えられた思いがしています。
ご夫妻は「心の病を通して人間を見つめ、看取りのプロセスの中で人間の実像に迫り、教育の働きを通して若者を育てる努力をして」こられました。
それは、「この世での希望という側面と永遠の命への希望をどう伝えるかという大きな使命を信仰者の一つの義務、託された仕事として」受けとめ、祈りつつ歩まれているご夫妻の対談から、年齢を問わず、大きな励ましと希望が与えられることでしょう。
「すべての人を照らすまことの光が世に来た」というみことばの解き明かしを聞いたかつての哲夫青年が、自分の生き方の中には見えてこない「光」というものが、この世の中にあるんだということをバイブルクラスを通してわかってきたように、まだ信仰を持っていない多くの方々が、本書を通して、そのまことの「光」があることを知るきっかけとなることができるよう願っています。
本書は読みやすく、奥の深い書物ですが、その時にかなった二十数葉の写真とともに、いつも人間を対象としていらした、ご夫妻のあたたかさに触れることのできる本です。