ブック・レビュー 『舟から出て、水の上を歩いて…』
ケン・ミルハウス
ボストン日本語キリスト教会牧師
膠着状態の信仰生活を送るクリスチャンに
信仰生活は「歩み」です。キリストに似る者として変えられていくための成長の歩みです。しかし、多くのクリスチャンは歩むどころか一切前進しない膠着状態の信仰生活を送っています。これは多くの教会で起きている現象です。毎週日曜日には礼拝をまもり、必要な奉仕を行うものの、平日はほとんど神様と関係がないような、安逸なクリスチャン生活を送っています。この現象が起きている現代にあって、本書は貴重な一冊だと思います。本書は、マタイの福音書十四章のペテロが水の上を歩く箇所をテーマにしています。あの箇所で舟に残った弟子たちがいわゆる膠着状態で満足するクリスチャンです。しかし嵐の中、安全な舟から出て、イエス様を信頼し、招きに応答したペテロは、他の弟子たちが体験できなかった、素晴らしい「水上歩行」を経験します。そして、その経験を通してペテロは成長し、変えられたのです。
オートバーグ師は、この信仰生活の「水上歩行」への招きは、今のクリスチャンにも与えられており、膠着状態の信仰生活から抜け出し、祝福に満ちた成長を伴う信仰の冒険をするようにと呼び掛けています。一歩踏み出すことで、神様の力と素晴らしさを体験し、主との関係が深まり「水上歩行者」としてのすごい体験をするようになります。
信仰生活のこの大切なことを著者はわかりやすく、ユーモアにあふれる文章で紹介します。なので、読者は厳しく責められるようではなく、優しくチャレンジを受けます。それが本書の魅力でしょう。また、翻訳をされた先生方は、アメリカで日本人伝道に励んでいますので、アメリカ、日本の文化をよく理解して訳しています。とくにユーモア等、わかりにくい文章は丁寧な説明文を加え、日本の読者にも通じるように上手に訳されています。
オートバーグ師は、アメリカではフィリップ・ヤンシー氏やマックス・ルケード師等と同じくらい有名です。今回、彼の本が翻訳されたことを嬉しく思います。クリスチャンの成長のために用いられることを期待します。