ブック・レビュー 『茶の湯の心で聖書を読めば』
山口 昇
アレセイヤ聖書研究所 所長
クリスチャンと日本文化は両立するのか
このたび私の茶友、高橋敏夫先生が『茶の湯の心で聖書を読めば』という本を出版されました。心からご推薦申し上げます。かれこれ四十年ほど前、高橋先生から教会で研修会をしたいので、キリスト教と日本文化という題で話してくださいと依頼を受けました。理由を聞くと、「山口先生は牧師のくせに茶道に打ち込んでいる。キリスト教と茶道は両立するのか、クリスチャンとして日本文化をどう考えれば良いのかを、体験を通して話してほしい」と言うことでした。
その後、高橋先生も茶道を習い始め、招いたり、招かれたりして交流を深めてきましたが、牧会のかたわら研鑽を積んでこられました。そして本書にも言及されていますが、「在主庵」という立派な茶室を建設され、さらに表千家から茶道教授の資格を得て、立派な茶人とおなりになりました。
本書は二章から成り、第一章は「茶の湯と出会う」と題して、ご自身の体験から語っておられます。特にキリシタン大名であり、茶人でもあった高山右近を通して、キリスト教と茶道は立派に両立することを歴史的に実証しておられます。この部分はまさに高橋先生の独檀場であり、私も大いに啓発されました。皆さんもぜひ読んでみてください。
第二章は「聖書に通じる茶の心」と題して、聖書の言葉をとおして茶道を解釈するという、実に興味深い内容です。私も多くの点で教えられました。私もいよいよ高橋先生にその座を譲るべきときが来て、「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」と感慨に浸っております。
本書は新書判で百二十ページあまりの小冊です。忙しい方も簡単に読めますが、その内容は実に充実しており、感心しました。クリスチャンの方にも、クリスチャンでない方にも、茶人にも、茶人でない方にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。