ブック・レビュー 『詩篇を味わうⅢ』 90-150篇
水野 健
枚方コミュニティ・チャペル教会牧師
信頼と安心感を与え、読者の期待を裏切らない
まさに詩篇をよく「味わう」ことができるシリーズです。味わいの深みを出しているのは、ヘブル語原典から出発しているからです。しばしば日本語訳聖書よりも正確に訳そうと努力されている点に気づきます。また詩篇の特徴であるパラレリズムを適切に考察しています。読む者に信頼と安心感を与えます。各篇の最後のコメントも大いに役立ちます。次に、味わいの広がりを出しているのは、トピックスです。時間、死海写本、量子力学、DNA、賛美、人種差別、留学中の経験、宗教改革時代、ユダヤ人の習慣と歴史等、多彩なトピックスが用意されています。それは詩篇を現代に結びつけて理解しようとする試みです。
この第三巻は詩篇九〇篇から始まりますが、その中には都上りの歌、ハレルヤ詩篇があります。聖書の中で最も長い詩篇一一九篇(一七六節)、最も短い一一七篇(二節)があります。読者の期待を裏切らない切り口になっています。
特に、ユダヤ人の過越の食事の慣習から、イエス様が最後の晩餐で実際に歌った詩篇、ゲツセマネに向かうときに歌われた詩篇は何かを検証しようとしています。最後の晩餐でイエス様が十字架を目前にした場面が想像できます。
詩篇は実際に歌われていました。表題があり作詞者、指揮者もいるのに残念ながらメロディーがわかりません。それは私たちが自分の信仰生活の中で歌うように任せられているからでしょうか。
先日、ある方が詩吟で詩篇一篇を歌われました。大変感動して、ハレルヤ詩篇はどのように歌うのですかと質問しました。その方は、笑顔で「聖霊に聞いてみます」と答えられました。
さて、鍋谷師は一五〇篇の最後に、「ここに、民族、宗教、能力など地上のすべての差別を越え、神の生命の息のみが生み出す賛美の大合唱のひびきを聞かないでしょうか」と自己流で歌うのではなく、まずハレルヤの大合唱を聞くことを勧めています。