ブック・レビュー 『詩篇を味わうII 42-90篇』
高木 寛
福音伝道教団 大間々キリスト教会牧師
響きわたる神からのメッセージ
本書を読み初めて、しばらくして、心の隅々にまで響いてくる神からのメッセージに興奮を覚えました。それは、一九九四年から今にかけて、田舎の小さな教会で毎週水曜日、詩篇を月に一篇のペースで、靴の上から足をかくようなもどかしい思いをしながら信徒と学び続けている者の新鮮な感動でした。おそらく、著者が『詩篇を味わうI』で「神のことばは密室の中、研究室の中でとどまることが許されません。それは聖徒の交わりの中でこだまし、預言者的な声として巷に響きわたり、後世まで語り継がれるべきものです」(一八頁)と語っておられることのひとつの結果ではないでしょうか。このことは、著者の聖書に向き合う真摯で真剣な態度(わかりにくいと思える表現や原意をそのまま用いる、聖書全体を読む)、神への敬虔な姿勢から生まれる深い学問への情熱とその成果(精密な本文批評と釈義、詩篇のパラレリズムを基盤としている詩文体の注意深い学び、本書で特に試みたトランスペアレントな読み方)を土台として、詩篇の味わい方の方法論を提示し(『I』一六~二三頁)、それを実際に行って見せ、神のメッセージを味あわせてくれているからだと思います。
まず各詩篇につけられたタイトルを読み、その新鮮さや、切り口の意外性に本文への興味を喚起させられます。次に、新改訳聖書第三版の本文を読み、神のメッセージの響きだす起点となる聖句の意味、時にそれは、当該詩篇の背景や前後関係、イスラエル史における位置づけ、神学上の課題、さらには当該詩篇の教会史上の出来事との関連、新共同訳や岩波訳との比較など、さまざまな角度から解説します。そして、それは詩篇全体にやがて聖書全体へより深く広く神のメッセージが響きわたっていきます。そのメッセージは、当然のように個人への適用を超えて、今日の日本の教会や国家、社会そして歴史に対して適用され、読む者の心を捕らえて離さないのです。第三巻目の出版が期待されます。