ブック・レビュー 『赦しをもたらす5つの方法』
辻岡健象
小さないのちを守る会 会長
自分に謝罪し、自分を赦すことで精神的にも霊的にも解放される
三浦綾子著『氷点』の主人公、陽子は叫びます。「誰かが私を赦すと言ってほしい」。赦しの必要は万人共通であり、その必要を認めることが謝罪の本質と著者は確信します。この本のキーワードは謝罪! です。しかし、このことばは、戦後六十年経っても、アジアに対して戦争責任の謝罪を明確にしてこなかった私たち日本人の心情に、ピンと来ないかもしれません。
しかし著者はそのような日本の情緒的文化的パターンに関係なく、私たちが生きていくうえで大切な、他者との関係(神との関係、人との関係、そして自分との関係)の解決、構築は、謝罪以外にないと確信し、それによって精神的にも霊的にも解放され、輝く人生があなたの未来に待っていると勧めます。
本書は、長年の豊富な人生経験(信仰生活、夫婦生活、親子関係、対人関係)と数多くのカウンセリングの体験と実績と現場の叫びです。壊れた人間関係を修復するため、時には懇願となり、祈り心となって心に迫ります。
四百ページの大作ですが、読み進むに従って吸い込まれるように一気に読んだり、あるいは立ち止まって自分の問題として考え、吟味し、またちょっと立ち止まり、ああ、そうすればいいのかと納得しながら、少しずつ、心に光が差し込んでくるでしょう。
各章ごとに、問題解決のテキストが用意され、和解のために具体的に語ることばも参考として列記されています。「ごめんなさい」「その償いに、何をしたらいい?」「二度としないように努めます」……。この中のひと言でも心から素直に言えるといいですね。あなたの対人関係のすべての解決のために、座右の書としてください。隠れたベストセラー、静かなロングセラーになることを期待しています。
最後に、どうしてもひと言。この本の一つの特徴「自分への謝罪」。金メダル受賞者は「自分を褒めてあげたい」と言います。しかし、あなたの人生の金メダルのために、さらに輝く人生を生きるために自分に謝罪して自分を赦す。ぜひご一読を!