ブック・レビュー 『闇に輝くともしびを継いで』
宣教師となった元日本軍捕虜の76年
大沼 孝
キリスト者学生会総主事
平和をつくる者の姿に心が燃やされる
良質の伝記を読むことは、私たちキリスト者の信仰を養うために、とても有益です。スティーブン・メティカフ師のこの自伝を読むとき、私たちは「闇に輝くともしび」を見るような大きな励ましを受けることができます。物語は中国雲南省の奥地の村から始まります。七歳で両親のもとを離れたスティーブン少年は十四歳の時から四年間、戦争捕虜として過酷な収容所生活を送ります。そこでエリック・リデル師(八一年に公開された映画「炎のランナー」のモデル)と出会い、敵のために祈ることを知った彼は、キリストにある平和の使者として、かつての敵国日本で三十九年間の宣教師としての歩みを続けたのです。
この自伝を読んで、メティカフ師の日本人を愛し続ける熱情が、私の心にもしみこんできました。収容所に押し込められ、尊敬する師と親しい友の命を奪われ、家族を引き裂かれた被害者である著者が、加害者の救いのために宣教師となったのです。そして、引退後もロンドンにある日本人教会のために奉仕を続けています。過去の戦争の歴史に対する日本人の無知に対して厳しく反省を求めているのも、日本人への愛のゆえです。
さらにこの本は、私たちがキリストの平和を宣べ伝える者となるようにと招いています。メティカフ師ご夫妻、中国でリス族への宣教師であったメティカフ師のご両親、リデル師、青森にあるハンセン病患者の教会、恵子ホームズ氏、そのほかの人々の証しを読むとき、キリストにある平和をつくる者たちのその姿に、読者は心が燃やされることでしょう。
私はメティカフ師に仙台で牧会していただきましたが、今も思い出す先生の冗談があります。私「先生の好きな言葉は何ですか」。先生「……『大安売り』ですかね。『バーゲン』なんてのも大好きですよ」。