ブック・レビュー 『闇を住処とする私、
やみを隠れ家とする神』
坂野慧吉
日本福音自由教会協議会・浦和福音自由教会牧師
まるで螺旋階段を降りるように読者を「霊性の深み」へと導く書
これは、「霊性」の書であり、「霊性神学」の書である。今の時代に「霊性」について言及する人は少なくないが、これほど深く探究した本は少ないのではないかと思う。この書は、第一に「聖書的」である。私は、著者と神学校時代から共に主に奉仕する恵みにあずかった者であるが、彼は聖書を神のことばと信じる福音的な信仰者である。
第二にこの書は、「福音主義神学」の書である。福音主義神学の価値を認めながらも、それが時代とともに見失ってしまった「霊性」に目を留めている。
第三に、「キリスト教会の霊的な遺産」を大切にしている書である。アウグスティヌス、ニュッサのグレゴリウスの著作からも霊的な祝福を汲み出している。
第四に、「現代の問題」を深く考えさせてくれる書である。著者は、村上春樹の小説を読みつつそこに提起されている現代の問題について、深い洞察を持っている。また、「男性集会」や様々な夫婦との対話を通して教えられた、「人の魂の暗闇」について述べている。
第五に何よりも「霊的であり、信仰告白的」である。自分自身の原体験や心の渇望、「やみを隠れ家とする神」を今も求め続けている。アウグスティヌスの『告白』のように、この書もまた、「信仰告白」の書であり「霊性神学」の書である。
この書をどのように読んだらよいか。第一に、「味わいつつ繰り返し」読むことである。著者の文章は、深い真理や複雑な心理を一つのことばでいきなり表現するのではなく、丁寧に様々な角度、いろいろな切り口から、まるで「螺旋階段を降りるように」、私たちの心を大切にしながら深みへと導いていくのである。
第二にこの書は「祈りつつ、黙想をもって」読む本である。自分の祈りのとき、黙想のときに、聖書とともに、座右の書としてそこに置いておく価値のある本である。自分の心に聴きつつ、自分の魂を探られながら読むことである。