ブック・レビュー 『青春の傷痕』
長谷川 与志充
三浦綾子読書会代表
幼き日の悲しい経験も、神の恵みによって照り輝く。
人にはだれでも、他人には知り得ない深い心の傷があるのだと思います。しかし『氷点』などで知られるあの作家、三浦綾子氏を実にすばらしい信仰・希望・愛で支え続けた三浦光世氏が、若き日にこれほどまでに大きな深い心の傷を負っていようとは。『青春の傷痕』を読むまで人々は決して知り得ないことでょう。この書はまさに三浦光世氏の「道ありき」ともいえる感動の自伝です。父親の死と母親との別離。幼くしてこんなにも悲しい体験をした人はこの世にどれほどいることでしょうか。それに追い討ちをかけるように、同級生などから激しい中傷が光世氏に加えられていきます。
こんな過去があるなら、当然後はマイナスの人生をたどるしかないと結論づけたくもなりますが、光世氏のその後の人生にはその名のごとく神からの恵みの「光」が照り輝くようになるのです。
その始まりは幼少より預けられた祖父の家でした。そこには聖書、聖画、聖歌があり、著者は大きな影響を受けたようです。後に、病の苦しみの中で牧師から聖書を学ぶようになり、一九四九年には受洗の恵みにあずかります。
本書には、三浦(旧姓堀田)綾子氏との出会い、結婚へと導かれていくまでが記されています。ここに至っては、光世氏に注がれた神の恵みの光は真昼の輝きとなります。
「苦しみにあったことは、わたしに良いことです。これによってわたしはあなたのおきてを学ぶことができました」(詩篇一一九・七一/口語訳聖書)と光世氏はあとがきで聖書の御言葉を用いて自らの人生を振り返っています。
ぜひ様々な苦難の中にいる方々にこの書を読んでいただき、「神のおきてである聖書を学ぶ」ことこそ、人生の苦難の解決であるというすばらしい真理を知っていただけたらと願っています。