ブック・レビュー 『魂をいやし、はぐくむ霊的風土』
――恵みが伝わる教会形成
野村 幸生
九州キリスト福音フェローシップ 香住丘キリスト福音教会 牧師
あなたの教会に人がいやされ、育てられる雰囲気を
私はかねがね人が育っていくためには、その人が育つ場の雰囲気が何よりも大切な要素であると思っていました。それは家族であっても、教会であっても同じであると感じています。そして本書を読みながらその確信を得ました。聖書の教えを第一の基盤とする私たちの教会では、いかに聖書の教えを正しく教えるか、そしてどのような神学的立場や背景をもって教会を形成するかを第一に考えます。しかし、その教えを伝える方法やその場の雰囲気には、無関心で無頓着になりがちです。人は、特に私たち日本人は、「その場の雰囲気」を気にし、その影響を最も受けやすい性質をもっています。
本書は、そうした場すなわち教会の雰囲気ともいうべき「魂の霊的風土」の重要性を説いています。教会で聖書の教えが、いかに正しく説かれていても、その雰囲気が何か冷たく、暗いものであったらどうでしょうか。私たちは、特に初めての場所、新しい場に誘われた時、あるいは招かれた時、まずその雰囲気を感じ取り、その印象で判断します。それは教会に来られる方々も同様です。
「対立や優劣の比較を強いられ、相手にすきを見せられない緊張した毎日の戦いの中で傷ついた現代人は、誰に対して心を開き、どこに心の重荷を降ろして、いやされるのでしょうか。教会にその解決と交わりを求めて来ても……(中略)……一方で、異端や新興宗教の、人を受け入れる温かい態度にほだされて、そこに迷い込む人がいかに多くいるかは……」(86頁)。
「エプロンとサンダルで集うことのできる小グループに新しい人を連れてくれば、新しい人はそこにある温かい雰囲気と神のご臨在に触れ、いやされ、素直な心にされます。そして神の御前にある自分の罪を知らされ」(171頁)。
私自身もある時期、著者とともに、同じ教会でその雰囲気づくりに取り組みました。ぜひ本書を一読、いえ二読、三読し、ご自分の教会、家庭の雰囲気を再点検されることをおすすめします。