ブック・レビュー 『 統一協会から愛する人を助けるために 』

『 統一協会から愛する人を助けるために 』
小菅 剛
日本イエス・キリスト教団 札幌羊ヶ丘教会牧師

元信者たちの「心」と向き合った一冊

 「人間は機械ではありません。機械は故障しても、修理すればすぐ前のように使えます。しかし、人間はそうでありません。心が傷つくと、それを癒すためにとても長い時間がかかります」(本書二六六頁より)。
本書は、マインド・コントロール研究所所長パスカル・ズィヴィー氏が統一協会に取り組まれた二十三年間から生まれた本である。
統一協会に関する本は多く出版されているが、本書のような心の琴線に優しく触れてくる本は珍しい。それは、副題の「人間は機械ではなく、心で生きている」からも伺える。著者が、統一協会にではなく、そこに息づいている人間とその「心」に向き合おうとしておられる姿勢が本書の特色である。
本書は、十六章から成る。教理、入信、恐怖心、思考停止、悲しみの神様などについて理解が重要であると語られている。それは、相手を理解しなければコミュニケーションができないからである。
コミュニケーションこそが、統一教会から愛する人を取り戻し、続く家族関係、人間関係へと回復させるからである。破壊された心を回復させるには愛のコミュニケーションが必須条件である。
そのコミュニケーションの場は作られなければならない。「拉致監禁」と悪評受け易いが、「会話の環境作り」であって、心を取り戻すために必要であるとあり、同感である。特に、第九章「『役事』の儀式について」の中で記されている霊体験した信者の心を取り戻すには必要不可欠と思う。霊体験させてマインド・コントロールさせられた信者からのカウンセリングには保護が必要なのである。
さらに本書には、元メンバーの証言がたくさん載っている。組織の内部を見ることができる。勇気を出して語ってくださった方々に感謝したい。
第十六章の「統一協会の伝道は憲法違反」を書かれた郷路征記弁護士の論文は、苦しむ家族と取り組むカウンセリングの方々に勇気を与える一文である。