ブック・レビュー 『12の危機からあなたを守る聖書のメッセージ』

『12の危機からあなたを守る聖書のメッセージ』
藤原導夫
日本バプテスト教会連合 市川北バプテスト教会 牧師

日常のことがらを題材として、聖書の世界を語ってくれる

 本書の著者ボブ・ラッセル牧師は二十年前には百二十人の礼拝出席者であった教会を現在では一万八千人を数えるまでに導いた人物である。北米のメガチャーチのひとつであるそのサウスウエスタン・クリスチャン・チャーチはケンタッキー州にあり、教会堂は三十六億円もかけて建てられたとのことである。

 本書はそのようなラッセル牧師の力の秘密を読者にかいま見せてくれるものとなっている。とはいえ、本書はいわゆるサクセスストーリー的なものではない。タイトルにも『12の危機からあなたを守る聖書のメッセージ』とあるように、私たちが直面する人生の危機の中でどのように聖書を読み、信仰の旅路を歩み抜いたらよいのかをねんごろに語りかけている書物である。

 そこでは次のようなテーマのもとに十二章に分けて記されている。「怖い」「疑いを覚える」「孤独だ」「お金がない」「誘惑にあう」「反発してしまう」「罪悪感にさいなまれる」「心配でたまらない」「反対される」「うまくいきすぎている」「悲しい」「死に直面している」。全部を読み通さなくても、ここにあるような困難に遭遇する時に、その箇所を拾い読みするだけでも、私たちは大いに助けられることであろう。

 ラッセル牧師は聖書と私たちの日常生活を結びつけて印象深く語ることに優れておられるようである。本書は最初から最後まで私たちの日常生活が中心的題材となっている。しかもそれらが聖書の物語と「より糸」のように絡み合って語られている。現代と聖書の世界が渾然一体となっているような感がある。しかもユーモアが随所にあふれて読者をあきさせない。牧師としてきっとそのような説教や牧会を常にしておられるのであろう。

 訳者の渡辺聡先生とは日ごろから交わりを持たせていただいているが、多忙の中にありながら奥様とのご協力で本書を生み出されたことに敬意を表したい。これからもさらに良書翻訳に取り組んでいっていただきたいと思う。