ブック・レビュー あなたは愛されている―
―慰めと励ましの三つのメッセージ
藤原 淳賀
聖学院大学総合研究所教授 日本バプテスト連盟 恵約宣教伝道所牧師
二〇〇五年に河野勇一牧師が執筆した『きみは愛されるため生まれた』が、いのちのことば社から装い新たに出版されることになった。著者は、温厚な人柄と確信に満ちた実践をもって大切な働きをされている牧師・神学者である。また、東日本大震災の復興支援の働きにも積極的に関わっておられる。このたびの出版は、二〇一一年という「時」に対する著者の応答といってよい。
本書は、「君は愛されている」というテーマを中心に、イザヤ書の三つのことばから、慰めと励ましのメッセージを記している。「あなたは高価で尊い」「あなたは忘れ去られない」「あなたは神に背負われている」――。今日多くの人々が聞く必要のあることばである。
「きみは愛されるため生まれた」というこの歌は、よく教会で歌われる。私たちはみな、神に愛されている。これは本当に大切な真理である。しかし私たちは、「愛されるために生まれた」だけではない。それは真理の半分に過ぎない。「君は愛する人となるように生まれて来た」ということを忘れてはならない。神を、また人を愛し、愛のうちに生きるように私たちは造られている。教会の交わりには、傷ついた人々を癒す″病院”の機能だけでなく、建て上げ送り出していく″トレーニング・センター”の機能が必要である。「だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい」(ルカ二二・三二)
とはいえ、まず受け入れられ愛されることが肝要である。愛する人となるためには十分に愛されることが必要である。
日本では十年以上、毎年三万人以上の方々が自らのいのちを絶っている。大震災後は、さらに状況が悪化していると言われる。この中で教会は「愛されていること」を声高に語らなければならない。「神はあなたを愛しておられます」ということを、キリシタン時代には「デウス(神)のご大切」と訳したと著者は紹介している。私はこの訳がとても気に入った。このタイミングで本書が出版されることには大きな意味がある。楽譜とCDもついている。ぜひプレゼントにも用いていただきたい。
『きみは愛されるため生まれた CDBOOK』
河野勇一 著
B6変型判 700 円
いのちのことば社