ブック・レビュー あのとき、キリスト者たちはナチズムとどう戦ったか

 『「バルメン宣言」を読む   』
牧田 吉和
日本キリスト改革派 山田教会牧師

「その多くがはじめて『バルメン宣言』の名を耳にした福音派の若い兄弟姉妹たちとともに戦時中のドイツの教会の闘いに学び、日本の教会のこれからについて真剣に語り合った……」(「あとがき」より)
このような共同研究が本書の誕生の背景です。本書のこの背景が、そのまま本書の存在価値と結びついています。
ナチズムとの戦いの中で、ドイツ告白教会によって生み出された信仰告白――「バルメン宣言」については、邦語で書かれた論文や専門書は少なくありません。戦時下における日本の教会の挫折と罪責意識が、ドイツの教会闘争への関心をもたらし、研究に向かわせたのでしょう。それらの専門書は多くの示唆を与えてくれます。
しかし、専門的学び以上に、今後の日本の教会のあり方を考えるとき、より重要な意味を持つのは“草の根的な学び”です。今回、著者が青年たちと行ったような粘り強い共同の学びが大切です。このような学びが、教会的戦いの基盤を育てることになるからです。挫折を経験した日本の教会の問題点こそ“教会的戦いの欠け”でした。
本書は各種のグループによる“草の根的な学び”に最適の書です。内容的には、ドイツ教会闘争とバルメン宣言についての導入的な紹介に始まり、宣言を構成する六つの条項の一つひとつが宣言本文に即して解説されます。さらに戦後、ドイツ教会の罪責告白としての「シュトゥットガルト罪責告白」と「ダルムシュタット宣言」が扱われ、最後にバルメン宣言と日本の教会について論じられています。
本書は次のような特徴を持っています。①内容のコンパクトさ。叙述は平易ですが、内容は濃い。積み重ねられた学びを踏まえ、要点を押さえて的確です。②確かな歴史的・神学的洞察。読者は本書を通して、神学的に考える訓練も与えられるはずです。③対国家という困難な課題についての、牧師としての経験に裏打ちされた実践的示唆。
福音主義の流れの中で、この種の書が現れたことは大きな喜びです。同時に、本書が日本の教会全体にも豊かな貢献をすることになると確信します。