ブック・レビュー この世における自立とは……


国分友里恵
歌手

人はさまざまな環境に生まれ、それぞれ二つとない人生を歩んでいきます。この世に「生」を受けることはとても神秘的です。素晴らしい出来事と、多くの苦しみもまたその神秘の中に組み込まれています。レーナ・マリアは比類なきチャレンジャーであり、「生きる」という意味を存在で表現できる数少ないアーティストの一人です。
歌手としてはもちろん、文筆家として、パラリンピック水泳の入賞者として、障害に左右されないパワー。個人的には彼女の絵に魅了された私です。この本を読んで、彼女は選ばれているのだと改めて感じました。何より素晴らしいご両親に恵まれ、多くの素晴らしい愛に満ちた人々に受け入れられた人として、揺るぎない土台に建つ堅牢なお城のようです。特に両腕がないというハンディは、ステージに立つ者にとって大変なことは言うまでもありません。
この本を読む直前に彼女の隣で一緒に歌う機会がありました。その立ち姿は素晴らしく、姿勢がよくてステキでした。心身共に大きくゆったりとしたバランスがあり、それは隣にいる私に伝わってきました。いつも明るく前向きな資質は、たくさんの愛の中に育E物だと言えますが、そんな彼女にも数えきれない苦悩があったことは言うまでもありません。体力気力のキャパを超えるほどのハードなコンサート・ツアーを終えた後、燃え尽き症候群に陥って大変な思いをしたこと。そして離婚の試練。障害は自分にとって不幸なことではないと言いきれる彼女にとっても、とても悲しい出来事だったと思います。
数々の輝かしいシーンの中でも、ひときわ光を放つのは自分以外の誰かを心配し、実際に助けること。何かを差し出せばそれにも増して大きな報いを受けると、心から語れる彼女の肝っ玉の大きさかもしれません。両腕を失った男性とその家族との出会いがきっかけで「レーナ・マリアと仲間たち」財団を立ち上げ、継続的に困難を抱える人たちを支援するために、以前にも増して力を注いでいます。
本書を読み終えて彼女のスケールの大きさに心揺さぶられ、まだまだ成長できる、そんな思いを心に刻んでいます。