ブック・レビュー これからの教会と牧師像へ希望ある提言として
小林和夫
東京聖書学院名誉院長
このたび、鍋谷師の『創世記を味わうⅡ』が出版されましたことを、心よりお慶び申し上げます。著者の年齢を思わせない健筆に驚いています。創世記を〝味わう”―いくつかあると思われる味わい方のなかで、もっとも大切な点を指摘しており、その「味わい」は、聖書と読む者の信頼関係を濃密にしてくれる良書です。
これから聖書を研究する者に対しては、創世記一章をヘブル語のテキストで読むことを奨励しているように思われます。これは、みことばを身につけさせる基本的な重要条件だと思います。評者も、重要な聖書のみことばをまず暗記するようにと指導する良き先輩に導かれたことが、どんなに幸いであったかを痛感しています。また、「はじめに」で第一巻『創世記を味わうⅠ』について述べられていますが、できればそちらを先に読まれるとよいと思います。
第二巻となる本書では、「創造のみわざ」を、ヨームを軸として第一日から七日まで取り上げています。しかも単に序列としての日数ではなく、第一の日は、創造の全領域を含んでおり、「創造のみわざ」は第二の日から第六の日に詳説され、第三は「神は完成された。そして休まれた」という、三区分をヘブル語の用法、ニュアンスなどを考慮して記述しています。
そして、その創造のみわざの詳説においては、現代科学や文学、哲学思想の広範な知識を用いて説明されています。とくに関連事項に対して著者は、博学の驚くべき展開をさせて、叙述を現代の用語で語っております。文献の引用の適切さには、全く脱帽するようなものを見ることができます。たとえば六三~六六ページの一世紀前半のユダヤ人フィロンや、一三六~一三七ページにわたる教皇庁国際神学委員会『人間の尊厳と科学技術』(カトリック中央協議会)などの引用文は、著者の広い読書、研究などを想像させます。
とにかく読んでみてください。広く大きな解釈へと向かう筋道を示し、やさしく記述されております。とくにヘブル語に関心のある方、学徒や研究者もぜひ精読されることをお勧めします。ほかに例を見ることができない良書です。