ブック・レビュー とげを持ちながら生きている
私たちのために
杉本 玲子
新生キリスト教会連合 町田クリスチャンセンター教育主事
ピクニックの森のなかよし広場の物語。
「わあ、癒し系~」と、ほのぼのとしたイラストにひかれて、気軽にページをめくっていくと、ずっしり重いことばに出会いました。
「ぼく ピックといっしょにあそぶのは もういやだよ。そんなに、とげだらけじゃ いたくて さわれないもの」
「どうして ぼくに とげなんか あるんだろう。ぼく いったい どうしたらいいの……」
「お母さんが、子どもたちに読み聞かせる絵本でしょ?」と思っていましたが、それだけではないようです。子どもたちだけでなく、心のうるおいを失いかけている大人たちにも、やさしく、鋭く語りかけているようです。
クリスチャン夫婦も、理解し合っているつもりでも、とげのあることばが飛び交って、傷つけ合うことがあります。「お互いに赦し合うことが大切」なんて理屈は百も承知なのに、です。そんな落ち込んでいるときに、建前ばかりのメッセージを聞くより、この本をそっと開いたほうが、素直になれるような気がします。
「ぼくらは チクチク はりねずみ。
ひとりで いるしか しかたがない。
だれも きずつけたくないし、
だれにも きずつけられたくないもの。
だけど やっぱり さみしいなー」
翻訳ではなく、みずみずしいことばが、ストレートに心に響きます。それに、優しいタッチで描かれている動物たちのイラストが、痛みを抱えている私たちの心をそっと包みこんでくれるようです。
野ねずみがデザインされたお気に入りのブランベリーヘッジのティーカップと、おいしいケーキを用意してティーパーティを開きたいな、という願いが与えられました。お茶の時間の後、親子で絵本を読んで、感想を分かち合ったりしたら、「子育て中のお母さんの家庭集会」なんて仰々しい名前がなくても、ママ友に喜ばれるすてきな集まりになると思います。