ブック・レビュー ベスト・シェフたちの一品料理の競演
中台孝雄
日本長老教会・西船橋キリスト教会牧師
太平洋放送協会(PBA)から毎年出版される、ラジオ番組「世の光」、テレビ番組「ライフ・ライン」の説教者たちによるバイブルメッセージ集。その最新刊が刊行されました。今回は、十一人の説教者たちによる四十一の説教が収録されています。説教者たちはどなたもよく知られた先生方で、見開きの短いスペースで、わかりやすく、今の日本の方々に届けたいメッセージを語りかけています。
毎回一定のレベルが維持され、定期的に届けられ、信頼して読むことができ、多くの人々の心に響くという点で、これはもう伝道文書界の「寅さん」シリーズと言っても良いかもしれません。(もっとも、私は「寅さん」映画を一本まるごと最初から最後まできちんと見た記憶はないのですが)。ともあれ、このシリーズは、ベテランあるいは俊英のシェフの方々による、レベルの高いみことばの一品料理として、安心して読み、また人に薦めることができます。しかも定価は三百円程度。一メッセージにつき、十円もしないという廉価です。
各説教で扱われている聖書箇所は、旧約では創世記が最も多く、詩篇がそれに続き、箴言やイザヤ書。新約ではヨハネをはじめ各福音書、コリント人への手紙やヘブル人への手紙などの書簡。読者は聖書の多様なみことばに触れて、聖書自体を開いてその前後を確認したくなることでしょう。
扱われているテーマは、信仰、希望、愛。人生における試練や艱難、悩み、愚かさ、いじめや危機、別れ、死、災害。また、思いやりや心の安らぎ、笑い、たましいと体の養い、ゆるしや成長や謙遜や変革。そして神については、創造や聖書、神のいつくしみ、そして神への賛美、祈り、服従等。おおよそ私たちが人生で経験する事柄が広く扱われ、読者はすなおに神への信頼に導かれていきます。
信仰者が養われるのはもちろんのこと、教会や家庭に常時数冊備えておき、親しい知人や教会に来始めたばかりの人に「どうぞ、お読みください」と気軽に贈呈する(贈呈される側にも負担を感じさせない価格設定!)。それがおそらくこのシリーズの最も幸せな用いられ方なのでしょう。