ブック・レビュー 三浦綾子の100のことばを
今に伝える珠玉のトラクト集
菜花和男
日本福音キリスト教会連合 栄福音キリスト教会牧師
『三浦綾子100の希望』は、時宜を得た出版である。昨年、著者の込堂牧師に当教会の秋の伝道集会に来ていただいた。帰り際に未信者の方々が先を争うように前作『三浦綾子100の遺言』を友人、知人のために買い求めていた。三・一一以来、被災地だけでなく、ここ北海道にあっても人々が希望を渇望していることを感じさせられる。そして、なんといっても今回は「100の希望」である。
込堂牧師も私も「福島県浜通り」に根のある者にとって、この一年は大きな落胆と焦燥感のある日々であった。数人の牧師チームで岩手県宮古市を訪ねたとき、込堂牧師は身を乗り出し、田老町の仮設住宅で財産一切を失った老人に傾聴し、慰めと希望のことばをかけておられた。衣食住が整ってきた今こそ、被災地に、ふるさと福島の方々に届けに行きたい希望の書である。
美しい北海道の雪景色の表紙をめくると、見開きの右ページには三浦綾子氏の本から心に残る一節が大きく、読みやすく掲げられている。それをじっくり味わいつつ、左のページに移ると、込堂牧師のさまざまな経験に裏打ちされた短いメッセージが述べられ、ふさわしい聖句が引用されている。さすがに長年テレホンメッセージをしてこられただけあって、分かりやすい文章である。
原発、災害、地震、津波、苦難、孤独、自殺、夫婦、親子、老いなど、テーマは多岐にわたっている。心ひかれる好きな項目から読み始めることができ、一分もあれば五百字の一編を読み終えることができる。どんな状況にある方にも読みやすい内容である。
三浦綾子氏は、生きること、愛すること、信じることについて、歯に衣を着せないで語る方であった。『三浦綾子100の希望』は、三浦文学の香りとともに聖書の教える希望を率直なことばでつづるトラクト集である。聖書に立脚した真実のことばこそ、未曾有の天災人災の渦中にある人々、またさまざまな苦難の中にある人々を励ます希望である。