ブック・レビュー 中嶋常幸 復活の軌跡
『ロープ』
“隔て”から“絆”へ

『ロープ』“隔て”から“絆”へ
米内 宏明
国分寺バプテスト教会 牧師

夫婦、家族の泥沼関係、そこにキリストによる希望が芽生えた

 ゴルフを愛して上達を目指している方々だけでなく、ゴルフになじみのないすべての男性と女性にぜひ読んでいただきたい一冊です。「隔てから絆へ」という副題にあるように、「プロゴルファー・中嶋常幸」一人の証しを超えた「夫婦の絆」の書だからです。

 読み終えて「それゆえ、男はその父母を離れ、妻と結び合い、ふたりは一体となるのである」(創世記二章二四節、新改訳聖書)というみことばに圧倒される思いでした。

 他人から評価されない自分を自分でも否定して、こんなはずじゃなかったと思い悩んでしまう男性たち。まして父親から愛されず、認められていないとなると、その愛と評価を得ることが無意識のうちにすべての行動の動機となってしまいやすい。

 そんな父・息子の関係の中で育った一人の男性のもとへ「嫁いだ」女性が、その家庭の中で抱えた苦悩を赤裸々に綴っています。

 「勝って認められたい」「負ける恐怖感を克服するため努力する」。プロゴルファー・中嶋常幸は脅迫神経症になり、妻に対しても否定的な態度を取るようになります。当時の自分は「病んでいた」と夫・中島常幸さんは妻・律子さんに語っています。一方、律子さんも自分を責め、苦しみ、心の深いところでは夫を赦せないでいました。

 しかしキリストのいのちは、そんな夫婦・家族の泥沼の中にさえも芽生えるのだという確かな希望を、この本は読む者に語っています。

 律子さんは「何よりも嬉しかったのは夫のために本気で祈れるようになっていったこと」と言えるまでにキリストの愛と癒しを受けました。常幸さんも、夫婦が「病んでいる」苦しみを乗り越えるには、男性が持つプライドの領域にまでキリストを迎え入れなければならないことを語ります。同じ弱さを抱えてしまう男性とその妻たちへの希望の書です。