ブック・レビュー 二人の牧師による
実践の報告の記録
鈴木 真
福音伝道教団 戸塚めぐみキリスト教会
本書は、東京基督教大学の国際宣教センター主催の東日本大震災に関わる公開セミナーで講演された一連の講演(FCCシリーズ)のブックレットの一つである。
二〇一一年に起きた東日本大震災をさかのぼること七年前、二〇〇四年九月にスマトラ沖地震があったことは読者の記憶に残っていることであろう。その地震で発生した津波は広範囲に上り、インド、スリランカ、バングラデシュ、タイ、インドネシアなどの沿岸諸国に甚大な被害を与えた。
当時、津波被害にあった沿岸諸国のキリスト教会で問われたテーマは、「その時、神は何をしていたのか」ということであったと言われている。確かに、その問いかけは被害を受けた国のキリスト者としては避けて通れないものであったろう。「どうしてこのようなことを神は許されるのか」という意味で「その時、神は何をしていたのか」ということが問われたのではと思う。
東日本大震災を経験した私たち日本のキリスト者も、そのような問いかけを現在も自問自答している部分がある。しかし同時に、もう一つの大切な問いかけがあることを忘れてはいけない。それは「その時、教会は何をしていたのか」ということである。このブックレットの題は「教会は何を求められたのか」である。まさに「その時、教会は何をしていたのか」の応答としての、二人の牧師による実践の報告の記録であるとも言える。
この本を単なる支援活動に関わった教会の牧師たちの証しとしてかたづけてはいけない。なぜなら、ここには日本全国の教会が問われている地域との関係、従来の福音提示の課題、地域の諸教会との協力、グローバルな宣教協力などにも考えを及ぼさせる大切なことが語られているからだ。「教会は何を求められたのか」という題は、すべての教会に向かって問いかけている言葉であることを強調したい。