ブック・レビュー 北の大地で育まれた
恵みと愛の詰まった栄養満点の一冊
山中智貴
日本ホーリネス教団 旭川福音教会牧師
本書を読み終えて、改めて三浦綾子さんという信仰者の主にある奥深さに感動を覚える。またこの方の守備範囲の広さにも驚かされる。十字架の真理、個人の救い、信仰生活全般にかかわることから平和問題、教育や原発、夫婦や家族、人間関係にかかわる幅広い領域を網羅している。しかも、聖書という信仰基盤からずれないで、聖書を通して現実を見つめているのが実によく分かる。
三浦綾子さんの聖書を土台とした価値観や、現実を見る目が決して借り物ではなく、救いにかかわる恵みの事柄が心と魂、生き様のうちにしっかりと受肉化されているからこそにじみ出るであろう配慮と叡智、愛に満ちた宝のようなことばが、本書のいたるところにちりばめられている。
祈りの人の周りには恵みの雰囲気がある。本書の題名のとおり、間違いなく三浦綾子さん、光世さんは祈りの人であり、三浦文学はこのご夫妻お二人の主にある祈りの結晶であろう。本書に収められている綾子さんの短い文章の一文一文から、綾子さんの主にある敬虔な祈りが聞こえてくるような気がする。
膨大な三浦綾子文学から珠玉のことばを選び、編纂なさったのが、旭川めぐみキリスト教会で二十二年にわたって牧会された込堂一博師である。ご近所であり、教会の開拓、成長を見守り、支えてこられた三浦光世さん、綾子さんご夫妻との普段着の交流を持たれた方である。実に近いところでじかに三浦ご夫妻の祈りを聞いてこられた込堂師ならではの編纂で、選りすぐられた綾子さんの祈りに満ちた愛のことばがどのページにもあふれている。
見開き二ページで一つのお話が完結しているので、どこからでも読める。綾子さんのことばに添えて、著者の短い解説、メッセージ、三浦ご夫妻との思い出等々が聖書のことばとともに綴られており、これもまた心に響く。信仰の有無にかかわらず喜んで読んでいただける万人向けで、柔らかなことばと祈りは、デボーションや伝道のためのプレゼント用としても最適である。北の大地で育まれた恵みと愛の詰まった栄養満点の一冊。どうぞご賞味ください!
作品への理解が深まる必読の一冊
三浦綾子 初代秘書 宮嶋裕子