ブック・レビュー 向き合うことが難しい親との関係
近藤愛哉
保守バプテスト同盟 盛岡聖書バプテスト教会牧師
著者による『親との関係をみつめる ―忘れられた贈り物』(一九九四年/現在は品切れ)を、人に薦められて読んだのは学生時代でした。当時、幼さと甘えから来る不平・不満と苛立ちを親にぶつけ続けていた私に、客観的に「親との関係をみつめる」ことを促し、その後の親子関係を築く上で、大きな指針を与えてくれた一冊として、強く印象に残っています。それから二十年弱、親としてわが子との関係を日々考えさせられ、他人の親子関係にも深く関わる機会が与えられるようになりましたが、「新」と付けられた本書の出版を心からうれしく思います。
「あなたの父と母を敬え」(出エジプト記20・12)
聖書がくり返し勧め、有無を言わさぬ調子で命じている事柄ながら、信仰者にとっても、向き合うことが最も難しい現実の一つが、親との関係ではないかという指摘から本書は始まります。親を敬うことができないという悩みや問題を抱えながら、一種の諦めと開き直りの中に居座ってしまいがちな私たちですが、著者の指摘は痛烈です。
「両親とはうまくいかなかったけれど、他の人とはとてもよい関係を築くことができた、ということは決して起こらないのです。それは子どもじみた幻想にすぎません。人間関係の原型となるものは、必ず、両親との関係にあります」(一四九頁)
親との関係を疎かにしているがゆえに及ぶ影響の大きさを思い、人の間で連鎖し続ける罪の性質が色濃く描き出された言葉として、身震いする思いで読みました。
しかし、本書の内容は問題の指摘にとどまりません。「敬う」とはどういうことか。どのように親と向き合い「敬う」ことができるのか、著者自身の経験を交えつつ、具体的な取り組みへと読者を招きます。
「ただ聞くだけの者」ではなく、「みことばを実行する人」になりたいと願う者、親との関係で悩む者、他者を心から敬うことのできる「シャローム(平和)」の関係に生きるために神に造られた者、つまりはあらゆる人に手に取り、読んでもらいたいと願う一冊です。